「ねぇねぇ東村山に行きたい蕎麦屋があるから付き合って~」と
従姉を呼び出し西武新宿線東村山駅でお昼に待ち合わせ。快晴!
駅からほぼ何もない通りを地図通りにてくてく数分。
脇道を住宅地に入って小さな川を渡ると、まもなく右側に古民家が現れました。
これは通りがかる場所では全くないです、知っている人が訪れる店。
「土家」と表札がありますが、目立つところに蕎麦の文字も見当たらず…。
暖簾をくぐり、敷石を踏み、引き戸を開けるとそこにまた素敵な玄関の
アプローチと共に若い女将さんの笑顔。
続く渋い色の板間に高い天井のカウンター席、あ~ここはいい蕎麦屋です♪
蕎麦食べる前だけど、蕎麦屋好きとしてはもう十分嬉しい!
そして声には出さなかったけど、さりげなく配された烏団扇がかわいい~!
これ八咫烏かしら、シブカッコカワイイ…。
帰ってしっかり検索すれば、府中の大國魂神社すもも祭で入手できる厄除け団扇だそう。
え~「この烏知ってる?い~な~」と府中付近に住む鳥好き編集者にメールしたら、
「うちに2個あるから1つあげる」とメールが!(嬉)求めよ、さらば与えられん。
あ、すみません調子乗りすぎました、蕎麦屋レポに戻ります。
2名での席のみの予約だったのですが、奥の間の大きなテーブルに案内されました。
庭が見えて気持ちいいのです。明るい天気の日も、しっとり雨の降る日も
雪見酒も良さそう~。
ではでは、熱燗を。
お品書きは非常にシンプル、2日前予約の季節の蕎麦懐石は昼3,500円、夜5,000円。
単品の蕎麦は田舎、大根おろし、温かいのはかけ、釜上げ、鰊のみ。
おつまみも5種類、天ぷらなどはない模様です。
夜も同じか聞き忘れましたが。
蕎麦は田舎、出汁巻きと旬野菜の焚合わせをお願いしました。
この空間で昼酒、贅沢です。
都心でこのたっぷりの空間を使った店作りはなかなか難しいでしょう。
電車でわざわざ訪れて良かったと素直に思えるひと時です。
熱い鯉川を飲みながら、従姉と近況報告。ご主人を6時半に送り出す彼女は
毎朝5時起きだそう…ひょえ~偉いっ。自堕落な自分がお恥ずかしい。
お酒と一緒に出された昆布の煮たの、美味しいです。
焼き味噌はないんですよねー。
しばらくして大きな見るからにふるふるの出汁巻き玉子が来ました。
じゅわ~っとたっぷりの出汁が溢れ出ます。やさしい上品な味。
ほんの少しの生姜が小さな蓮華にちょこんと添えられています。
えっと次冷やにする?
またもゆるゆるしばらく待ち、忘れてないよね?と少し思い始めた頃、野菜の鉢が。
なんと美しい焚き合わせでしょう。
店主自ら説明をしてくださいます。
舞茸、里芋、蕪の間引き菜、芋茎、小松菜、たらこ、そして薩摩芋の蜜煮。
別皿で煮秋刀魚も!
すごい丁寧~。これは時間がかかるでしょう。
ちょっとお酒で火照ったところに、ひんやり味のしみた野菜が本当に美味しい。
まさか出すタイミングも計算の上とか(笑) だったらすごすぎ。
とくに思わず!!となったのは蜜煮。
蜜の甘さとレモンの爽やかさが絶妙、薩摩芋あんまり興味ないのに感動しました。
「実は今年ゴールデンウィークに行った武蔵五日市のオステリアチ(osteriaC.)
のご主人に伺って来ました」と伝えると、
そうですかーわざわざありがとうございますととても気さくにお話しして下さいました。
オステリアチに連れて行ってくれたKeiちゃんにも感謝!
秋刀魚も骨までほろり、言うことなし。
さぁお蕎麦です。
つゆは明るめの色、でも甘すぎることはないです。
蕎麦は田舎のイメージを覆す細さ!
ちょっと柔らかめながら何とも独特の繊細さを持った田舎蕎麦に仕上がっています。
ちょっと他のどこの蕎麦屋とも違う感じ、個性的です。
酔いのせいではありませんが、ピント合ってないし…(恥
お蕎麦も大変美味しくいただきました、満足。
それにしても空間といい、出てくる器といいセンス良すぎじゃないのと
猪口を掌で転がしていると…。
極めつけ登場! この湯桶やだー素敵すぎ。
ぽってりしたフォルム、マットな黒色、持ち手まで本体続きの焼き物、
そして蓋部分は渋い赤褐色!
わーいいなぁ、誰の作?売ってないのかしら(悪い癖)と褒めちぎっていたら、
なんと店主の作でございました!しかも一点もの。びっくり。
全部ではないけど素朴な形のもの、入り口の棚にも沢山並んでいます。
確かに蕎麦のコネと陶芸のコネ、共通しますね!
なるほど土と相性のいいお店なわけだと納得しました。
次は蕎麦懐石を予約したいと思います。
蕎麦屋らしいつまみで飲んで蕎麦という普通の店とは一線を画す、
きっちり修行した料理人の作品を堪能するスタイルが相応しいかと。
新宿から50分は掛かりませんよ、ちょっとした遠足気分でいかがですか。
厳密な蕎麦好きというより、どちらかというと蕎麦屋好き。
立地、建物、作り、居心地の良さ、醸し出す雰囲気、人柄、品書き、
酒の種類、つまみの量、器、価格、混雑度合い…
など蕎麦に至るまで様々なポイントがあって、好みに合うポイントが多いほど、
自分にとってのいい蕎麦屋だと思っています。
なので、
・バリエーション豊富で蕎麦だけささっと昼食べる蕎麦屋
・行くなら夜つまみでじっくり飲みたい蕎麦屋
・蕎麦掻きを食べに行く蕎麦屋
・1人で昼下がりに飲む蕎麦屋
・蕎麦は普通だけど何かほっとする蕎麦屋
・宴会しやすい蕎麦屋
・下町情緒を楽しむ蕎麦屋
・若い人と行くワインのあるオサレ系蕎麦屋(笑
と、テーマと気分次第でいろいろあるのですが、土家さんは言うなれば
・ゆっくりしたい時に訪れるべき蕎麦屋 もしくは
・定期的に通いたい蕎麦屋
でしょうか。
過去最高にくつろげるかも、総合得点の高い1軒になりました。
帰り際の誰もが、古民家や雰囲気、蕎麦、器について会話しながら
「美味しかったです、また来ます~」と、
自然に言葉がこぼれる様子がまた和やかで感じいいです。
「私もまた来ます~」
東村山「土家」――畑を耕し、土を焼き、蕎麦懐石の深みを創る/
ダイヤモンド・オンライン
土家 東村山市 蕎麦をこねる 土を練る 人と交わる/蕎麦の散歩道
↑あぁっ白子の天ぷら!
土家 (そば / 東村山)
★★★★☆ 4.0